SUSUME (feat. NENE & JP THE WAVY) の歌詞解説
進め進め止まらない このビートに乗って SUSUME
「SUSUME」というタイトルに込められた二重の意味
「進め」という日本語の命令形をそのままタイトルに据えたこの楽曲は、JP THE WAVYが得意とする日英ミックススタイルの極致。「SUSUME」のローマ字表記は海外リスナーにも発音可能でありながら、日本のヒップホップシーンが「前進する」という意思表明そのものになっている。
また「止まらない」と「乗って」の韻の踏み方は、母音「a-a-a-ai」と「o-tte」の対比を作り出し、ビートの推進力を言語レベルで再現。MonyHorseのトラック制作におけるBPM設定(おそらく140前後のトラップビート)が、この「止まれなさ」を物理的に体現している。
NENE on the track 稼ぐのが先 過去は振り返らない 未来だけ見てる
NENEの「稼ぐ」哲学とストリート・クレデンシャリティ
NENEは近年の日本語ラップシーンにおいて、女性ラッパーとして「稼ぐ」ことを前面に出すスタイルを確立してきた。「稼ぐのが先」という断言は、ヒップホップの本質であるハスル精神への回帰を示す。
「過去は振り返らない」のラインは、2010年代後半の日本のトラップシーンが直面した「ブーム後」の停滞を意識したものとも読める。JP THE WAVYやMonyHorseが属する新世代は、ブームに乗るのではなく「稼ぐ」という実利を追求することでシーンを再構築している。
韻構造も「track/先」「振り返らない/見てる」と、語尾を変化させながら意味の流れを作る技巧が光る。
JP 波に乗る まるでサーファー このフロウは tsunami 止められない
JP THE WAVYのアーティスト名を活かしたメタ的ワードプレイ
「WAVY」という名前そのものが「波」を意味することを活かした、極めてメタ的なリリック。「波に乗る」は音楽的トレンドに乗ることと、文字通りの波(WAVY)に乗ることのダブル・ミーニング。
「tsunami」という日本語由来の国際語を使うことで、JPが体現する「日本発の世界基準」という姿勢を表現。2020年代のJPは88rising周辺のアジア系アーティストとの交流を深めており、日本語が世界に波及する(tsunami)ことへの確信がこのラインに現れている。
「サーファー/止められない」の韻も、「ー」音の伸ばしを活かしたフロウの波打ち感を演出。ビートの上でのライド感(サーフィング)をリリック内容とライム構造の両面で表現する高度な技術。
MonyHorse のビート 3人で暴れる このサイファー 誰も止められない
プロデューサー名言及とコラボレーションの美学
ラッパーが自らのトラック内でプロデューサー名を叫ぶのは、DJ Khaledの「We The Best Music」やMetro Boominの「If Young Metro don't trust you」以来のトラップ/現代ヒップホップの定番手法。MonyHorseの名前を出すことで、このトラックが単なる楽曲ではなく「チーム」の作品であることを宣言している。
「3人で暴れる」は、フィーチャリング2名+メインアーティストという構成を明示し、サイファー(即興的なラップの輪)の概念をスタジオワークに持ち込んでいる。2020年代の日本のトラップシーンでは、YZERR、Bonbero、Kohjなどがこうしたコレクティブ的動きを活発化させており、本楽曲もその文脈に位置づけられる。
「暴れる/止められない」の反復は、楽曲全体のテーマ「SUSUME(進め)」を強化する構造的リフレイン。
終わらせない このセッション 朝まで SUSUME 次のステージへ
「終わらせない」に込められた永続性の哲学
アウトロ部分でのこのラインは、楽曲の終わりを宣言しながら「終わらせない」と矛盾を提示する。これはヒップホップ文化における「継続」の重要性への言及であり、一曲が終わっても運動(ムーブメント)は続くというメッセージ。
「朝まで」というクラブカルチャーの時間軸を持ち込むことで、リスナーに実際の身体的体験を想起させる。日本のクラブシーンにおいて、朝までの営業は法規制との戦いの歴史でもあり、「SUSUME(進め)」という言葉が法的・社会的制約に対する抵抗の意味も帯びる。
「セッション/ステージへ」の韻は、音楽制作の現場(セッション)からライブパフォーマンスの場(ステージ)への移行を示し、楽曲制作からツアーまでのアーティスト活動全体を一つの「進め」として捉える視点を提供している。